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今からところどころ端折って説明するのは、昭和56年に、ある中学校長が「男子生徒は丸刈りにすること」という校則を制定し、交付したことを発端にした裁判についてです。
 訴えを起こした原告は、丸刈りがどうしても嫌だったのであろう当時の男子生徒とその両親、被告は中学校を設置した町と中学校長です。

原告は以下の点を憲法違反だとし、丸刈り強制の校則が無効であると主張しました。
 ・本件中学の男子生徒を、住居地及び性別により差別的に取り扱うことを定めており、憲法第14条違反。
第14条 第一項「すべての国民は、法の下の平等にあって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。」
 要するに女子生徒は丸刈りじゃないじゃん差別やってことですね。
それからこの中学校周辺にある別の学校は丸刈りの強制は行われていなかったようです。

・個人の感性、美的感覚あるいは思想の表現である髪型の自由を侵害するので憲法21条違反。
第21条 第一項「集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。」
 俺は長髪が好きなんだ!表現の自由の侵害だ!って感じか。

・頭髪という体の一部につき、法廷の手続きによらず切除を強制するから憲法31条違反。
第31条 「何人も、法律の定める手続きによらなければ、その生命もしくは自由を奪われ、またはその他の刑罰を科せられない。」
うーん。うん。まぁそうなのか?

また教育活動は、専門的かつ自主的な全人格的作業であるから、学校には相当の教育裁量権が認められていますが、本件校則の制定はその裁量権の範囲を越えてなされたものだとしています。
他にも「いかに丸刈り強制が校則規定の目的のために役に立たないか」等この校則には合理性が無いですよ~ということを主張しています。


 
一方被告側は、教育活動の場である学校について「一種の公法上の特別権力関係」を形成することについて述べ、丸刈りの強制も含む広範な裁量権を主張し、合理性を説きました。
 最近疑問視されるようになってきた特別権力関係論ですね。
 要するに中学校と生徒といった特殊な関係の中では、特別の規律に倣ってくださいね、ということです。
特殊な関係には、公務員の勤務関係・国立の学校病院図書館との権利関係etcが含まれます。 
それで、判決はどうなったかですが、熊本地方裁判所は昭和60年に以下のような判決を述べました。
中学校長は、教育実現のため、生徒を規律する校則を定める包括的権能を有しているが、具体的に生徒の服装等にいかなる程度の規制を加えることが適切であるかは、中学校長の専門的、技術的な判断にゆだねられている。
丸刈りは今なお男子児童生徒の髪型の一つとして社会的に承認され、特に郡部においては広く行われ、必ずしも特異な髪型とは言えないことなどに照らすと、本件丸刈り校則は著しく不合理であることが明らかであるとは言えない。

裁判所は校長の幅広い裁量を認め、丸刈り強制は「著しく不合理であることが明らかであるとは言えない」と結論付けました。
この判決について、各機関の受け止め方は多様でした。
教育現場や教育委員会は丸刈り校則はOKなんだと前向きに受け止めたようです。
 一方で文部科学省は丸刈りの校則について、判決を機に見直す方向が出てきたことを述べています。
また法務省は、昭和33年に長髪禁止を拘束に掲げることには問題があるとしていました。 
 憲法学会では、この判決が憲法違反であるという意見が多かったようです。
日弁連も、丸刈り校則は人権侵害であるという見方でした。
 
立場によって様々な見解があり面白いですね。
僕は部活でテニスをやっていたころ、先生に坊主を強要されて嫌な思いをしたので、丸刈り校則は違憲だと思います。
しかも髪が生えてきたころには癖毛になっていてとてもショックだったので違憲だと思います。

ちなみにこの裁判は憲法13条で押していけば勝てたのではないかと言われています。
第13条 「すべての国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。」
これは・・・勝てますわ。